Kojin kyotoで開催されていた「From Code to Material」について紹介します。
3フロア構成の本展は、展示タイトルが示すとおり、白い塗料をタンクから点滴のように垂らしてできた 〈White Code〉を中心に、ミニマルな世界から始まります。
〈Trans-Sacred Deer〉に誘われるように階段を上がると、2階にはPixCell シリーズとPrismシリーズなどが並びますが、例えばこのピクセル、中身は本物のバナナとバゲットです!
20年以上取り組まれて来たPixCell シリーズ最初期に使っていた食品のモチーフは、試行錯誤されていた頃はガラスビーズの中で食べ物が腐ったり芽が出たりしてしまったそうです。
それが現在、研究所の協力で、プラスティネーションという水分と脂肪分を合成樹脂に置き換える手法により永久的に保つことができ、本作が生まれました。
最上階の3階には、作品だけでなく、たくさんのマテリアルサンプルやテストピースも並びます。clubsandwichとしての一番の見どころは、それが全て含まれてる〈Material Shelf〉 (Material and Book Shelf)
本作は、まるでSandwichのスタジオの一部がやってきたような作品で、一つ一つ見ていくとそれだけではない楽しさもあります。
棚には流木や種子、貝殻などの素材、小作品やテストピースが並ぶなか、例えば、いくつかの球体に詰められているのは、作品で使用するガラスビーズや炭化ケイ素、マイクロビーズ、それから、錠剤カプセルや実は食品もあります。
散りばめられた小作品のうち、本のvelvetは、名和さんのお父さまが所有されていた思想家の全集がモチーフになっていたり、昔飼っていたワンちゃんをモデルにした、小さな小さなblack fieldの作品もあったりと、作家個人の歴史もおり混ぜられています。
本展の構成は、1階の情報化された”コード”から、上に上がって行くにつれ、創造の源である素材や物質”マテリアル”へと立ち戻っていくわけですが、単なる一方向的なものではないように思います。
20年以上前の発想が現在になって実現したり、最近の作品にもモチーフとして使われている種子が、9年前のPrism作品にも見られたりと、情報と素材が、時間を越えて行き来していて、また、どのフロアにも物質量の単位でもある Molをタイトルとする立体作品が配置され、そこに名和さんの一貫した眼差しを感じます。
窓側を中心に並ぶ立体作品は、一つずつ作られた吹きガラスで覆われています。
コロンとした覆いである”Cell”は、宇宙船のようでもあり、培養ケースにも見えたり。窓の外に見える鴨川の景色とも共鳴しています。